今回のトランクショーの目玉の一つであり、我々が最も興奮したORCHESTA(オルケストラ)の新作革靴をご紹介します。
Mercurio(メルクーリオ)とViolino(ヴィオリーノ)の2型。
T氏がこれらのモデルで試みたのは、「革靴にしかできない世界観の表現」。
昨今はスニーカーにますます追いやられている感がありますが、やはり革靴にしか醸し出せない雰囲気というのは確実に存在しますし、その魅力というものに今一度気付いてもらいたいということです。
このスタンスは前回から続いているのですが、前作が「脱着」というスニーカーに劣る部分に着目していたのに対し、今回は「デザイン」という側面でアプローチすることで、その復興を試みています。
これが大当たり。
デザインという、分かりやすい正解のない鬼門の要素にあえて挑戦する勇気と自信。
あらためてT氏のセンスと情熱に感心させられました。
特に保守的な紳士靴というものは自由度が限られており、ほぼすべての様式は出尽くした感がありますから、その中で違いを生み出しながら美しいモノに仕上げるというのは至難の業。
それも単純にプロダクトとして優れているというだけでなく、ファッションとして違和感無く楽しむことができて、履き心地にまで考慮するとなるとさらに難易度は跳ね上がります。
T氏の持つ類稀な生産背景とこだわりにより、マテリアル&作り込みはその辺の高級靴を軽く凌ぐレベルを基本とした上で、伸びやかで大胆なほどのデザインアプローチを展開していますので、単純にガワだけのハリボテではなく、中身は実に実のある本格靴というのが一番の肝。
また、既成靴でこういうものはほぼ見かけません。
というのも、これだけ攻めたデザインでこれだけの作り込みであれば価格がどえらいことになりますし、もちろん量産するにはロットもありますし、サイズ展開もあるので販売側にはリスクだらけ。
ということで、必然的にビスポークとなってしまうわけです。
実際、ヴィンテージのビスポーク木型を元にしていることもあって、その佇まいは既成靴らしからぬ特別感アリ。
ビスポークと言われれば信じてしまうようなオーラがあり、本当にスペシャルな雰囲気を纏うことができます。
しかも今回アッパーに使える革は、超高級ビスポーク工房でもなかなか使えないようなまさに雲上モノ。
さらに革は載せ替えが可能というフレキシブルさ。
これが現実的な価格で1足からオーダーできるというのは、あらためて考えると物凄いことです。
基本的に実店舗とONLINE SHOP上でのイベント時にしかご注文いただけませんので、本当にこの機会をお見逃しなく。
また、ほとんどの革は数量限定ですのでお早めにどうぞ。
ここからは、モデルごとに深くご紹介させていただきます。
まずはMercurio(メルクーリオ)。
もう語るまでもなく美しいの一言なのですが、この中性的なデザインを決定づけているのは、深く開いたサイドのカッティングとそれをホールドするシングルストラップ。
インソール付近までカットが入っているため、より抜け感が強く、シャープでカッチリとした印象もありながらリゾート感もあるという絶妙なバランス。
もう一型のViolino(ヴィオリーノ)に比べれば、どちらかというとより暖かい季節向きと言えるかもしれません。
なお、今回の2モデル共通の特筆すべき点は、「ソックスのレイヤードで遊べる」という部分。
地肌の見える分量が一般的な革靴の比ではないため、さまざまなお色のソックスを合わせることで大きく印象を変えることができます。
靴自体のデザイン性や存在感もさることながら、この部分に差し色を加えることで足元によりインパクトを出すことが可能。
もちろん、素足を見せることで軽さを出すこともできます。
ストラップの真鍮製バックルは、T氏がアンティークマーケットで見つけてきたヴィンテージもの。
古いモノならではの趣があって、このデザインと雰囲気に素晴らしくマッチしています。
そしてアッパーのモカ縫いはもちろん手縫い。
機械で施したものとは、細かさも立体感も段違いです。
イタリアらしいスクエアトゥもやりすぎ感がなく、ただただ美しいですね。
あ、ちなみに木型は一新されており、これまでのものよりも踏まずの絞りが強く、丸コバで立体感のあるウエストライン。
全体的によりシャープで端正なルックスです。
これまでのオルケストラの全モデルと同様、こちらもハンドソーンウェルテッド製法を採用。
ねじれた形状の足形に添う複雑なツイステッドラストを採用していますので、単純でまっすぐな量産木型とは追従性が異なります。
この手のデザイン性の強い靴であれば大体がセメント、良くてマッケイ製法がほとんどですから、この雰囲気でツイステッドラスト&ハンドソーンの量産靴というのは靴作りに精通されている方ほど驚かれると思います、異常ですから。
(その上でプライスにも驚愕されるはずです)
そしてもうひとつのモデルがこのViolino(ヴィオリーノ)。
メリージェーンのレースアップバージョンのようなデザインですが、三の甲あたりをくり抜いた超本格靴といった表現の方が正しいでしょうか。
こちらも中性的で非常に美しい一足です。
もちろんこちらもモカ縫いはハンド。
ただ、サンプルは吊り込み後にモカ縫いをするという超絶技巧で作られていますが、製品版は吊り込み前に縫いが入ります。
さすがにそれをしてしまうとコストが跳ね上がってしまうので…
そしてMercurioと同様、ウエスト周りは絞りが強く、丸コバ仕様。
出し縫いもかなり奥を攻めているため、真上から見下ろすとステッチが見えず、コバの張り出しも控えめ。
総じてエレガントに見えます。
そしてこちらもソックスのレイヤードで相当遊べます。
なお、Mercurioに比べて地肌の露出は控えめなため、アッパーと同色のソックスを合わせていただければ、よりシックにまとまりやすいというのも特徴。
それはそれでメチャクチャカッコ良いです。
というかこちらのモデルは靴単体で見るよりも、断然足入れしたときの方が美しく見えます。
サンプルのサイズが合う方はぜひ足を通してみて下さい。
あ、ちなみにアッパーの革は載せ替えが可能。
これがまたハンパじゃないラインナップになっています。
ここまでお見せしてきたサンプルシューズの画像からすでにお分かりかもしれませんが、凄まじいクオリティの革揃い。
これまでもベビーカーフを中心として、現行モノを遥かに凌ぐ品質のデッドストックレザーを発掘してきたT氏ですが、立ち位置の変化により、現行レザーも含めた最上級中の最上級革を以前よりも遥かに容易に入手できるようになっています。
今回チョイスいただけるハイエンドレザーの数々は、T氏曰く「これまで扱ってきた革の中でも最高レベル」と称する極上品。
・POLARIS(ポラリス)という新進気鋭の凄腕タンナーによるミュージアム”ボックス”カーフ(ストラップシューズMercurioのサンプルで使用している革)
・ZONTA(ゾンタ)のデッドストックボックスカーフ(レースアップシューズViolinoのサンプルで使用している革)
・ILCEA(イルチェア)のデッドストックヴェネチアンレザー
・ILCEA(イルチェア)のデッドストックボックスカーフ
どれも激ヤバです。
そしてどれも恐ろしく高価な革ですが、これを比較的安価に調達できるというのもT氏の凄いところ。
そもそも入手すること自体が極めて困難なのですが…
(ポラリスなんかは小規模のため、ほぼエルメス専属になりつつあるらしいです)
なお、これらの革はGINO RAIMONDIのUチップやストレートチップ、ホールカットなどでもお使いいただけますし、ORCHESTRAのサイドゴアブーツ、ダブルソールウイングチップ/Uチップでも採用可能。
ぜひ色々妄想して、自分好みの一足をオーダーしてみて下さい。
また、今回はスエードレザーからもお選びいただけます。
ただ、これもただのスエードじゃありません。
最近ルイヴィトンあたりも採用し始めたという、水シミにならない特殊スエード。
元々雨の日用としても重宝するスエード靴ですが、こちらはさらにその点に秀でた、このタンナーにしか作れない特殊な逸品です。
なお、画像では5色ほど写っていますが、こちらで2色に絞らせていただきます。
実際にお選びいただけるお色につきましては店頭にてご確認下さい。
なお、今回の新作新木型の2モデルについては、サイズ確認用の仮靴を各サイズバッチリご用意しています。
ソックスをご持参の上、ぜひご来店下さい。
T氏共々お待ちしています〜