ちなみに今回はもの凄ーく長いです。
覚悟してじっくりお楽しみ下さい。
欧米のヴィンテージウェアに深く精通したデザイナー、大貫達正氏が手掛けるデニムブランドです。
今や、オールドマンズテーラーやヘリーハンセン、ペイデイなども手掛ける売れっ子の大貫氏ですが、アメリカンカジュアルからブリティッシュテーラード、アウトドアスポーツまで多岐に渡って手掛けることができるのは、広範で膨大な知識と優れた編集能力の賜物。
要はとにかくセンスが良い。
彼は生粋のヴィンテージデニムマニアでもあるのですが、古き良きジーンズを精緻に再現するレプリカ系とは全く異なる着眼点でジーンズを再考し、ブラッシュアップさせることで、ニュースタンダードとなり得る完成度の高いジーンズを発信。
巷に溢れるデニムとは一線を画す、オリジナリティ溢れるデザインとシルエットの良さ、洗練されたパッケージング、手に取りやすい価格帯など、唯一無二の立ち位置で人気を博している新鋭デニムブランドです。
デニム好きであればあるほど、リーバイスのダブルエックスから連なるビンテージへの憧憬からか、それらを再現しようと躍起になってしまうのが普通なのかもしれません。
しかしそれにこだわるあまり、欧米人のために設計されたそれがアジア人の我々に似合うのか?現代の生活や美意識に馴染むものなのか?といったファッションやワークウェアとしての根元的な視点が欠けてしまいがちです。
生粋のヴィンテージデニムマニアにも関わらず、そのあたりを俯瞰的に捉え、現代の道具として機能するジーンズを創り出すというのは、想像を超えた難しさがあったはず。
しかも、世界で知らない人はいないほど身近で、あらゆることがやり尽くされた感のあるジーンズというアイテムにおいて、ルックスからして明確な差別化を図れているというのはもの凄いことです。
また、それが決してイロモノではなく、すべてのディテールが意味ある形で存在し、時代を超えて愛されるポテンシャルとデザイン強度を持ち合わせている点にも驚かされます。
まず、本来あるべきウエストパーツの切り替えがありません。
これは視覚的に一番のポイントですね。
元々のジーンズの起源はオーバーオール(いわゆるツナギ)をウエスト位置でカットしたものと言われています。
このようなデザインは一見斬新とも思えるものですが、実は歴史的背景に裏打ちされたものであるというのが面白いところ。
切り替えが無いことで、フロントジッパーは途中で終わってしまったような違和感があるのも楽しいです。
でもジッパーはTALON製でヴィンテージムードをプラス。
そしてウエスト内側にも大きな特徴が。
WEST’Sロゴ入りのゴムバンドがぐるりと一周縫い付けられています。
これも当然見た目だけの代物ではありません。
ゴムが入っていることでウエスト周りのフィット感が高まりますからウエスト位置がずれにくいですし、しゃがんだ時などはウエストがやや伸びる感覚があって楽チン。
さらにタックインしたシャツやTシャツなどにインディゴ染料が色移りしてしまうのを防ぐ効果もあります。
色移りだけでなく、タックインしたトップスが飛び出しにくくなるメリットも。
こちらについても50年代に存在したというゴム製のマーベルトをモチーフにしており、ただ便利なだけではなく歴史を感じさせるディテールだったりします。
そしてジーンズだけでなく、ウエストオーバーオールズのほとんどのボトムスに付属しているのが、専用サスペンダーを留めるためのループ。
ここに装着することでクリップ式のように生地にダメージを与えることなく、ウエスマンの無い特徴的なウエスト周りをしっかり見せることができます。
残念ながらご好評につき専用サスペンダーは完売していますが、クリップ式のサスペンダーもこのループ部分に留めることで同様の効果を得ることが可能です。
サスペンダーはちょっとキメキメな感じで抵抗があるという方は、肩で装着せずに垂らしておくのがオススメ。
腰回りに絶妙なアクセントをもたらしてくれます。
バックポケットには刺繍が入らず、すっきりモダンな佇まい。
ポケット口左右のスクエアに飛び出したステッチもちょっとしたアクセントに。
ボディと同色でバータックも入っていますので、もちろん強度はしっかりしています。
さらに印象的なのがアウトシームがインシーム同様、巻き縫いになっているという点。
ラングラーを彷彿とさせるディテールで、一般的なセルビッジや割縫い仕様にはない生地の盛り上がりが特徴です。
洗っていくとパッカリングが出てきて、いわゆるキャタピラーとは異なるアタリ感を楽しめます。
強度も上がりますので、長年履き込むことを考えると頼もしい仕様でもあります。
しかしなぜ、本格的なジーンズに欠かせない要素であるセルビッジ(いわゆる赤耳)を採用しないのか?
実はここにこそ、このジーンズの核心があります。
そもそもセルビッジは生地を織った後の生地端がほつれてこないようにするためについているもの。
そしてデニム生地というのは、一定の幅を保ちながら織られたものですね。
このため、セルビッジは基本的に直線になります。
これを重ねて縫い合わせるのですが、生地端を等間隔に保って縫う以上、アウトシームは必然的に直線にならざるを得ません。
こうなると、シルエットの構築を内股側のみの調整で行う必要が出てきます。
ただ、立体裁断のパンツなどを見ればわかるように、人間の足はやや内振りに湾曲したような形になっていますので、アウトシームが直線だと足にちゃんとマッチしてくれません。
このため、セルビッジジーンズを履くと突っ張るような違和感を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ましてはO脚の割合が7割とも8割とも言われる日本人であれば尚更です。
ウエストオーバーオールズのジーンズは、あえてセルビッジを捨てることでその問題点を克服。
日本人にとって理想的な、他に類を見ない美しいシルエットを実現しています。
そう、ここのジーンズの肝はシルエットの素晴らしさにあるんです。
これを実現するために、MRIのように体の断面をいくつも撮影し解析。
体の凹凸を徹底的に分析してパターンに落とし込むというアカデミックな手法が取られています。
そんなしっかりとした理論に基づいて作られたものでありながら、理屈じみていないといいますか、柔軟性があるといいますか、ちゃんとファッションとして感性に訴えかけるものに仕上がっているというのもセンスのなせる技、素晴らしいです。
あと、生地についての説明がまだでしたね。
リゾルトの711と横並びにしてみましたが、明らかにWESTの方が青味が強いのがお分かりいただけるでしょう。
そう、デニムの色味についても他とは一味違うんです。
皆さん、セルジュ ドゥ ニームというフランス語はご存知でしょうか。
これはフランス ニーム地方のサージ生地を意味しており、これがデニムの語源だと言われています。
このエピソードをインスピレーション源に、フレンチブルーを意識した青味の強いデニム生地を採用。
これがまた美しいんですよ。
洗うごとに鮮やかさを増す特徴的なインディゴカラーは一般的なデニムの色味とは一線を画すもの。
他にはない新鮮なムードを醸し出してくれます。
岡山県井原市で織られているというこの生地は、13.5オンスのしっかりとしたクオリティ。
毛羽やムラ感などは控えめで斜行もほとんど出ませんが、装飾性を極力排したデザインや美シルエットとの相性は抜群で、ヴィンテージのレプリカものでは表現できないモダンなムードも覗かせます。
もちろん色落ちも楽しめますので、じっくり履き込んでいって自分だけの一本に育てていただきたいですね。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
実寸上は若干テーパードしているものの、巧みなパターンでストレートに見えるという技ありの一本。
適度にゆとりがあって履きやすく、中庸で親しみやすい雰囲気ですが、どんな方が履いてもラインが崩れにくいように巧みに計算されていたりと、見えない部分にもこだわりが詰まっています。
インシームに角のできない、スムースなストレートシルエットが美しいですね。
股上は深く、レングスはカットしなくていいように短めの作り。
比較的小柄な日本人には嬉しい設定です。
このバランス、このムードは他では見つけられないと思います。
ウエストのジーンズに共通するのは、必要なところは締めて、必要なところには余裕を持たせるという発想。
ウエストには内側にゴムバンドを仕込んでピッタリフィットさせ、逆にヒップや腰回りには適度な余裕を持たせることで、たるみなどの気になる部分を目立たなくさせています。
ちょうどヒップポケットの下のあたりですね。
特に女性の方が気にされるポイントだと思います。
その一方、股ぐり付近は削り気味にして適度にフィットさせることで、小尻に見える効果も狙っています。
ロールアップするとテーパード感が出て、よりスッキリ目の印象に。
このあたりはシューズやトップスとのバランスを見てアレンジしていただければと思います。
あと、画像では全く伝わりませんが、想像以上に履き心地が良いというのもウエストのジーンズの特徴。
女性の方にリゾルトやAPCのデニムをご試着いただくと、「こんな固くてゴワゴワしたやつ履けないよ〜」と言われることがよくあるんですが、その後、ウエストを履いていただくと「全然ラクで履きやすい」と皆さん言われます。
まぁ、確かに薄手のストレッチ入りジーンズに履き慣れた方にしてみれば、ヘビーオンスでノンストレッチの生デニムなんて拷問以外の何者でもないですからね…
しかしウエストのジーンズは、必要な部分に余裕を持たせたシルエット、突っ張りにくい巧みなパターン、ウエスト内側のゴム製マーベルト、ごわつきにくい生地感などが相まって、硬さのないストレスフリーな履き心地を実現。
膝が出やすかったり、ポリウレタンが経年劣化してしまう短命なストレッチデニム生地でもないので、長く履き続けられるというのもポイントです。
そのあたりの「履き始めの快適さ」というのをより考慮して、当店では女性寄りのサイズはワンウォッシュタイプを、男性寄りのサイズはリジッドタイプをセレクト。
男性の方は硬めの生地感に慣れていますからね、最初はリジッド特有のハリのある感じも楽しんでいただければと思います。
ワンウォッシュとリジッドでも随分色味が違いますね。
先程もお伝えしましたが、このブルーの鮮やかさが秀逸なんですよ〜
洗っていくと、青味がより鮮やかになって美しいんです。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
ノンストレッチ生地のタイトシルエットで履き心地の良いものというのはなかなか見つけにくかったりします。
というのも、闇雲に細くしすぎると動き辛くて膝裏が鬱血したりと、色々な問題が起こりかねませんから。
私も昔、ディオールオムの激細ジーンズを我慢して履いてましたが、膝の裏は履くたびに内出血していたような記憶があります…
20代ならオシャレは我慢と頑張れたんですが、40代の今は確実にムリ…
でもこの806Tは細身の割には履きやすく感じます。
太ももあたりからいきなり極端にタイトな設計にするのではなく、裾に向かって徐々にテーパードさせつつ、裾幅はかなり絞り込むことでシャープさを表現。
このおかげで、全体としてはタイトなラインに見えるのに、パッツパッツしすぎず無理のない履き心地に仕上がっています。
ただし、それなりにふくらはぎからくるぶしのあたりは細いので、運動していてそのあたりが太い方なんかには合わないかもしれないです。
ちなみにこのモデルに関してのみ、酵素の力で色落ちさせたバイオウォッシュモデルも仕入れています。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
あえてヒゲやハチノスなどのつけない色落ち加工が施されているので、一般的なUSED加工されたジーンズとは違った印象に。
ワイルド感が出ないというか、都会的というか、結構新鮮です。
でも安っぽい感じはなくて、シーム周りなどの濃淡はしっかり出ていて味わいもあります。
余計な切り替えやステッチなどがないシンプルなルックスだからこそ、この加工が活きる気もします。
あと、ビッシリ立派なヒゲとかが入っていると、主張が強過ぎてコーディネートの邪魔になったりすることもあるんですが、これだとすんなり溶け込んでくれますね。
特にクリーンな服にはこういう感じの方が合わせやすいんじゃないでしょうか。
ちなみにメンズサイズのみですが、ブラックジーンズタイプもあります。
(モデル:身長168cm体重55kg細身男性 / 30インチ着用)
ブラックの色落ちはやり方次第で下品にもなってしまいがちなんですが、いい具合に仕上がっています。
ちなみにモデルは私ですが、27インチがジャストサイズのところを30インチで履いているので、ちょっとルーズな感じになってますね。
ジャストサイズで履けば、もっとシュッとした感じになるはずです。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
微妙なのでわかりにくいかもしれませんが、裾にかけてわずかに広がりのあるシルエット。
フレアと聞くと抵抗のある方もいらっしゃるかと思いますが、一般的なブーツカットやベルボトムみたいなカウボーイ感というか70’s風味というか、そのあたりのいなたさをあまり感じさせない今っぽい雰囲気なので違和感なく履いていただけます。
そもそも実寸上もほんのわずかしか裾が広がっていませんから、この写真をとっているときもカットによってはストレートに見えることもあったり。
それくらいさりげないんですよ。
ただ、フォーカスすべきはフレアの部分だけではなく、センタークリース入りで丈もやや短めという絶妙なバランスにもあります。
クリースが入ることでシルエットもよりスッキリ見えますし、キレイ目な印象もプラス。
クッションの入らないレングスに設定することでもたつきが出ませんし、足長効果を狙った一般的なフレアパンツとは趣の異なる独自性を感じさせます。
(モデル:身長168cm体重55kg細身男性 / 28インチ着用)
こちらはリジッドタイプ。
なお、サイズアップして履いていますのでやや大きめです。
糊が効いているので、クリースラインがはっきりくっきり。
よりキレイ目な印象ですね。
もちろん洗っていけば柔らかく、より履きやすくなっていきます。
ちなみに洗い方にもよりますが、リジッドモデルは多少の縮みが出ますので念のためご注意を。
ただ、昔のXXみたいな極端な縮み方ではありませんし、ウエストは履いていくとやや伸びてくるので結果的にあまり変わりはありません。
レングスは1,2cm程度縮むかと思いますが。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
先程ご紹介したフレアモデルにパッと見は似ていますが、こちらはストレートシルエットで丈も少しだけ817より長め。
平置き上は緩やかにテーパードしているものの、センタークリース入りでスーッと素直に落ちていく、スラックスをイメージした型です。
大人っぽいですね。
ネイビーのブレザーなんかにも合いそうです。
その組み合わせで授業参観とか出かけたら、「○○ちゃんのママおしゃれー!」と話題になりそうです。
勝手な妄想ですけど。
(モデル:身長168cm体重55kg細身男性 / 28インチ着用)
こちらはリジッドモデル。
よりパキッと、上品な雰囲気です。
クリースが入ると前後に生地を持っていくので、左右に生地が広がりにくく、シルエットはスッキリ。
でも全体としてゆとり感はあるので履き心地はラクです。
それなりに太ももやふくらはぎが太い方でも履きやすいと思いますよ。
(モデル:身長167cm 7-9号体型 / 26インチ着用)
ご覧の通り、バルーンでコクーンでオーバルな、見事な曲線を描くユニークな形をしています。
でも、裾に向かって絞られていて、レングスもスッキリしているのでイヤミじゃない。
足のラインも出にくいので、足の太さを気にされる方にもお勧めです。
ジャストサイズをお選びいただければ腰やヒップ周りもダボつかず、ハイウエストということもあって上半身を華奢に見せてくれそう。
合わせるトップスはタイト目でもゆったり目でもどちらでも合いますし、個性的なシルエットながらかなり使い勝手が良く、これを履いてるだけでオシャレ感が演出できるかと。
ということで説明は以上です。
長文お付き合いいただきありがとうございました。
何はともあれ、とにかく一度履いてみて下さい。
「このジーンズはなにかが違う」と感じていただけるはずです。
実際、見た目よりも断然履き心地が良いですし、足にクセがあってもシルエットがキレイに見えると評判です。
最初は乗り気じゃなかった方が、試着してみたらシルエットや履き心地の良さを気に入ってくれて購入されるというケースもちらほら見受けられます。
ブランド名や記号ではなく、モノの良さを実感してご購入いただけているという事実がこのジーンズの素晴らしさを何よりも物語っていますね。
究極的にはファッションというより日常に寄り添う道具としてたくさんの方に履いてもらいたいという想いから、価格は税抜1万円代と買いやすい設定になっているのも素晴らしい。
企業努力に頭が下がります。
もちろん昔のデニムも素晴らしいですが、こちらは既存の価値観にとらわれることなく、偉大な過去を柔軟に引用し、現代に、日本人に最適化した新感覚のニュースタンダードジーンズ。
傑作だと思います。
男女問わず、猛烈にオススメします。
ちなみにネットだとサイズ選びが難しいかと思いますが、可能な限りアドバイスさせていただきますので、お気軽にお問い合わせ下さいね〜
また、交換等もお受けしていますので、万が一サイズが合わない場合もご安心下さい〜