今シーズンのアケヨスにはもう一つ、特に心躍る新作がありました。
(モデル:身長168cm体重56kg細身男性)
【シャツ : Aquellos Ojos Verdes BISHU / Size : 2】
このキーネック、クルーネックにスリットを入れただけの単純なものではなく、絶妙な曲線を描く凝ったパターン。
身頃の包まれるような立体感と相まって、一見して明らかに良いモノだと分かるオーラが漂います。
タキシードシャツのブザムのようにも、メキシカンパーカーのそれのようにも見える、Vゾーンのスクエアパッチも適度なアクセントに。
ステッチの判別が困難なほど織り柄が奥行き深く複雑というのもあって、ナチュラルな立体感を加えつつも全体の統一感を阻害しない絶妙な塩梅。
キーネック先端のグリカンはあえて白糸で施してあり、手作業のぬくもりが。
これも悪目立ちしない程度の上品なアクセントになってくれています。
袖口はスリーピングシャツと同じ、パフスリーブのようなイメージで製作されたカフス付き。
とはいえ、あからさまにギャザーの入ったフェミニン寄りなものではなく、ドレス感が強すぎないながらも筒袖などより圧倒的に洒脱なニュアンスがあります。
好きなんですよね、この雰囲気。
ロールアップがしやすいというのも優れたポイント。
ガントレットボタンのない剣ボロ仕様だったりすると、特に無造作感のあるロールアップが難しい上に崩れやすいんですが、これだと適当にたくし上げるだけで良い感じにまとまりますし、キープもしやすい印象です。
当然ながら、こちらもマニカスポスタータ(後付け袖)ですので、立体的で美しく動きやすい仕様。
イセを殺しきることなく、それでいていかにもな雨降らしというほどでもない、ひかえめなギャザーも上品です。
スリット入りで前後差を付けたスクエアカットの裾も、スリーピングシャツと同様。
手縫い付けのガゼットももちろん健在です。
【パンツ : FRANK LEDER / Size : XS】
プルオーバーということで身幅もたっぷりしており、風抜けも良いのでこれからの暑い季節はタックアウトがメインの使い方になるかと思いますが、タックインした感じもカッコいいんですよね〜
軍パンなどカジュアルなボトムスとの相性も良いんですが、綺麗めトラウザーズでタックインするといきなり大人っぽく、インテリな佇まいに。
この上からブレザーなんかを羽織れば、ビジネスカジュアルでも通用しそうな雰囲気。
スタイリングやコーディネート次第で、相当に振り幅広く活躍してくれます。
そして、やはりアケヨスといえばその秀逸な生地使い。
こだわりのデザインや仕立てと掛け合わさることで相乗効果が生まれ、唯一無二の存在感を放ちます。
こちらの生地も他では見かけないユニークなもの。
しかもアケヨスの場合、縦横の編成見本をデザイナー自らが作り、それを機屋さんにプレゼンして織ってもらうこともあるというほどの徹底ぶり。
実際、オリジナルテキスタイルを売りにしたブランドは結構ありますが、中には配色やごく一部を簡単にいじっただけなのに一から作り上げたかのようにミスリードするところもあります。
そういう、マーケティングのためのなんちゃってオリジナルとは比べ物にならないこだわりや熱量が込められているのがアケヨスのオリジナル生地です。
さらに文化や芸術をインスピレーション源として生地に落とし込むという発想もユニーク。
その場合でも変に理屈っぽくならず、あくまでファッションとして機能・成立するバランスにまとめられており、そのあたりにもセンスの良さを感じます。
今回のものはアムンゼン、いわゆる梨地織り生地でして、梨の皮のような細かな凹凸があるのが特徴的。
さらに経(タテ)糸は淡色のトップ染めリネン、緯(ヨコ)糸には濃色のリネンとシルクを配置したシャンブレーになっており、Ancientという名前の通り、古代を思わせるような重厚で奥深い、いにしえ感漂うムードが。
とはいえ不思議と土着的な野暮ったさや時代錯誤感は無く、見事なキーネックデザインと相まって、ユーロワークのスペシャルビンテージ品と言われても納得してしまいそうな雰囲気すらあります。
全体の4分の3をリネンが占める上、アムンゼン組織による凹凸感によりドライタッチで肌離れが良いというのもポイント。
肘など特に動きのある部分には顕著にシワが刻まれ、迫力が出てきますので、自分だけの表情に育て上げる楽しみもあります。
シワを味わいとして解釈できるので、お手入れ楽チンというのも嬉しいですね。
もちろん、ご自宅でお洗濯も可能です。
私もお気に入りで早速ヘビーローテーションしていますが、とにかくレイヤードが楽しい。
インナー次第でかなり印象が変わります。
ヘンリーネックカットソーでワークっぽく味付けしても良いですし、
ドレスシャツの襟を出してラフに着こなすのも良し。
襟をキーネックの中に仕舞えば、より上品で控えめなルックスに。
Vゾーンに余白があるので、スカーフやネックレスも映えますね。
ネックラインの見事な曲線と立体感が際立つため、シンプルにクルーネックTシャツやタンクトップをインナーに持ってくるだけでもOK。
ノーカラーやスタンドカラーのシャツにはない抜け感を醸し出せます。
キーネック部分はやや内側にカールしてきて、より立体的なニュアンスがついてくるのも特徴です。
(モデル:身長168cm体重56kg細身男性)
【シャツ : Aquellos Ojos Verdes BISHU / Size : 2】
【その他 : 私物】
細いリネンの60番手単糸をしっかりとした打ち込みで綾織り。
さらにこれを岡山でインディゴ染め。
基本的にディテールは前述のアムンゼン生地モデルと同じですが、ネック周りのステッチなどはダブルになっているといった違いがあります。
しかもこのステッチ、あえてボディと同色ではなく濃いチャコールグレーの糸が使われており、インディゴの色が抜けてくることでチャコールのステッチが浮き出てくるような経年変化も期待できるとのこと。
これは楽しみですね。
かなり細番のリネンということで、目が詰まっていながらも薄手で軽やか。
とはいえ綾織りということもあってか極端にペラペラで頼りないというほどではなく、春から秋にかけてロングシーズン重宝しそうです。
藍染めならではの、独特なインディゴブルーはやはり魅力的。
ラフさと上品さを兼ね備えた素晴らしい風合い。
フレンチビンテージにおいて名作として高値で取引されている、インディゴリネンスモックの生地を彷彿とさせます。
ハリコシの強いリネン生地ならではの、大ぶりではっきりとしたドレープはよだれモノ。
これにインディゴ染めならではの色落ちが加わると考えると楽しみでなりません。
なお、こちらは生地染めですので一般的なジーンズのようなロープ染色による中白糸ではありません。
このため、デニムのようなコントラストの強い色落ちにはならず、全体的にフェードしていく感じになります。
サックスブルーくらいまで抜けてくると、また別次元の迫力と魅力が出てくるはずです。
前後差のあるスクエアカットの裾、スリット&手縫いガゼット付きという点は共通。
こちらもインナー次第で印象をガラリと変えられますし、タックインすることでバランスも一気に変わりますので、コーディネートやスタイリングの楽しさを存分に味わえます。
といった感じで説明は以上。
どちらの生地モデルも魅力的ですから、甲乙つけ難いですね…
とにかくこのキーネックデザインはレイヤリングの可能性を大きく広げてくれる優れもの。
紳士服のアイテムバリエーションはとかく限定的なため、コーディネートもマンネリになりがちですが、こちらを加えることで新鮮なニュアンスを注入することができ、お手持ちのアイテムにも新たな輝きをもたらしてくれること請け合い。
どちらの生地モデルも袖捲りすれば真夏も着用可能なため、夏のアウターとして着用いただけるのはもちろん、肌寒い季節もVゾーンのニュアンス付けに一役買ってくれる、オシャレで汎用性の高いとても便利な一着です。
ぜひお試し下さい〜